【まとめ】BIS:デジタルマネーが競合する未来はどうなる?銀行預金・プラットフォーム通貨・CBDCの影響を理論モデルで分析

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【まとめ】BIS:デジタルマネーが競合する未来はどうなる?銀行預金・プラットフォーム通貨・CBDCの影響を理論モデルで分析
【まとめ】BIS:デジタルマネーが競合する未来はどうなる?銀行預金・プラットフォーム通貨・CBDCの影響を理論モデルで分析

【まとめ】BIS:デジタルマネーが競合する未来はどうなる?銀行預金・プラットフォーム通貨・CBDCの影響を理論モデルで分析

国際決済銀行(BIS)は、小売決済の市場構造が大きく変わる可能性について、最新ワーキングペーパー「Competing digital monies」で分析を発表しました。

銀行預金が長らく“標準の小売マネー”として中心的役割を担ってきましたが、近年、以下の新たな競合が急速に存在感を増しています:

  • ビッグテックのデジタルプラットフォーム通貨(例:アプリ内トークン)
  • 民間ステーブルコイン
  • 中央銀行デジタル通貨(CBDC)
  • 即時決済システム(Fast Payment Systems)

BISは、これらの競争が決済システムの構造にどのような影響を与えるかを、
2面市場(two-sided market)理論 × 決済経済学のモデルを組み合わせて評価しました。


■ 1. 研究の焦点:デジタル通貨同士が競争したら何が起きる?

本ペーパーが分析したのは次の3つの支払い手段:

  1. 銀行預金(Bank deposits)
  2. デジタルプラットフォームの私的トークン(Platform tokens)
  3. 中央銀行デジタル通貨(CBDC)

さらに、

  • 公的インフラとしての高速決済システム(Fast Payment System)
  • デジタルキャッシュ(Digital forms of cash)
    が追加で登場した場合の影響も評価しています。

■ 2. 主な結論(Key Results)

BISは3つの核心的な結論を示しています。


① “囲い込み(Walled Gardens)”状態だと、利用者も取引量も不十分になる

  • 決済サービスが互換性なしに閉じたエコシステムで運営されると
    → 利用者のアカウント保有が進まず、
    → 取引量も効率的な水準に届かない。

金融包摂(Financial Inclusion)が抑制される結果となる。


② 即時決済などの公共インフラがあると、金融排除は解消されるが“銀行離れ”が起こる

  • 公共の高速決済システムによって
    異なる決済サービスが相互運用可能になると、
    → 金融排除は解消され、利用者が広く参加可能に。

しかし:

  • その代わりに銀行の預金シェアが低下
  • ノンバンク決済業者が台頭する

つまり、
“効率性向上と引き換えに、銀行の一定のディスインターミディエーション(仲介離れ)が進む”
という構造変化が起こる。


③ CBDC と高速決済システム(FPS)は “ほぼ等価の効果” を持つ

BISは驚くべき指摘をしている:

CBDC(公的デジタルマネーの提供)も、
高速決済システム(民間決済間の相互運用性提供)も、
決済市場の構造に与える効果は “本質的に等しい”。

どちらも:

  • 支払い手段間の相互運用性を確保
  • 金融包摂を向上
  • 社会的厚生(Social Welfare)の改善につながる

つまり、
CBDCは“唯一の正解”ではなく、公共インフラによる相互運用も同じ目的を実現できる
という示唆です。


■ 3. 論文が示すより広い意味:決済は「三つ巴の競争時代」へ

今回の分析は、現在起きているトレンドと強く対応しています:

● 銀行預金

→ これまでのデフォルトの小売マネー
→ だがデジタル競争でシェア喪失のリスク

● プラットフォーム通貨(例:ビッグテック)

→ ユーザーベースの大きさとUXで強力に台頭

● CBDC

→ 公的・中立的なデジタルマネー
→ だが普及には民間との競合・調整が不可欠

BISの主張では、
相互運用性(Interoperability)こそが決済市場の健全性を左右する最大要因
となる。


■ 4. 結論:最も重要なのは “オープンな決済インフラ”

BISは明確に示しています:

  • デジタルマネー同士が競合する未来において、
    互換性のない閉鎖的エコシステム(Walled Gardens)は最悪の結果を生む
  • 一方で、
    CBDCを導入しても、高速決済システムを整備しても、
    相互運用性が確保されれば金融包摂と社会厚生は改善できる

さらに、

  • ディスインターミディエーション(銀行預金離れ)はある程度避けられない
  • しかし市場全体としてはより効率的で包摂的な決済システムになる

という評価。


■ BIS:デジタルマネーが競合する未来はどうなる?銀行預金・プラットフォーム通貨・CBDCの影響を理論モデルで分析のまとめ

テーマBISの結論
相互運用性なし(Walled Gardens)利用者も取引量も伸びず、非効率
公共インフラ導入(FPSやCBDC)金融包摂向上・取引増加・ただし銀行のシェア低下
CBDC vs 高速決済システム市場構造への効果は本質的に“ほぼ同じ”
社会厚生(Welfare)公的インフラ導入で改善

この論文は、CBDC議論においてよくある「CBDCが必須か?」という単純化を超え、
“本当に重要なのは市場全体のオープン性”
であることを示す非常に示唆に富む内容です。


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