― 欧州理事会が「加速」を指示、2026年法整備・2027年パイロット開始 ―
以下は、記事「European Central Bank to ‘Accelerate’ CBDC Plans, Eyeing 2029 Digital Euro Rollout」(Ryan Gladwin著、2025年11月1日)の要約です。

💶 欧州中央銀行、デジタルユーロ導入を2029年に前倒しへ
欧州理事会(European Council)は、欧州中央銀行(ECB)に対し、中央銀行デジタル通貨(CBDC)=デジタルユーロの開発を「加速」するよう正式に要請しました。
これにより、2026年に欧州議会で関連法案が可決されれば、2027年に試験運用を開始し、2029年に正式導入される見通しとなりました。
🏦 ラガルド総裁:「ユーロは信頼の象徴、次の段階へ」
ECB総裁のクリスティーヌ・ラガルド氏はX(旧Twitter)上で、
「私たちはデジタルユーロの“最終段階”に入る。ユーロは私たちを結ぶ信頼の象徴。」
と投稿し、プロジェクトの重要性を強調しました。
ラガルド氏によれば、現金依存の削減と経済のデジタル化が目的であり、
「できる限り早期に導入したい」としています。
🔍 デジタルユーロとは:CBDCの特徴と設計思想
- CBDC=中央銀行が直接発行する法定通貨のデジタル版。
- 民間のステーブルコインとは異なり、公開ブロックチェーンを使用しない。
- ECBは「分散型台帳技術(DLT)」の採用は見送るが、“設計原則の一部”は取り入れる予定。
この構造により、発行者が中央銀行、流通が銀行・消費者間という従来型の通貨管理体制を維持します。
⚖️ 規制とスケジュール:2026年が分水嶺
ECBのブログ投稿によると、今後のタイムラインは以下の通りです:
| 年 | 内容 |
|---|---|
| 2026年 | 欧州議会でデジタルユーロ設立法案審議・可決見込み |
| 2027年 | 「パイロット実験」開始、初期取引テスト実施 |
| 2029年 | 欧州全域で正式ローンチ(予定) |
開発費は13億ユーロ(約15億ドル)、
運用費は**年間3.2億ユーロ(約3.7億ドル)**と見積もられています。
💥 CBDCとステーブルコインの対立構図
記事では、CBDCはしばしばステーブルコインのライバルとみなされていると指摘。
- ステーブルコイン発行企業(Tether、Circleなど)も資産凍結機能を持ち、監視リスクは共通している。
- 米国では2025年、トランプ大統領がCBDC禁止令を出し、代わりに「GENIUS Stablecoin Act」を可決。
- トランプ支持のWorld Liberty Financial社はドル連動ステーブルコイン「USD1」を発行。
その結果、ステーブルコイン市場は急成長し、時価総額は3,074億ドルに達しています(DefiLlama調べ)。
一方で、テザー社は2024年にユーロ建てステーブルコインの発行を停止するなど、欧州での規制圧力は強い状況です。
🌍 国際比較:各国のCBDC動向
| 国・地域 | ステータス | 備考 |
|---|---|---|
| 欧州連合(EU) | 2027年パイロット、2029年導入予定 | デジタルユーロ構想 |
| 中国 | 先行導入 | デジタル人民元(e-CNY)パイロット継続中 |
| ロシア | パイロット段階 | デジタルルーブル |
| インド | 実証実験中 | eルピー(小売・卸売) |
| ナイジェリア | 2021年導入済み | eナイラ |
| 米国 | CBDC禁止、代替として民間ステーブルコイン推進 | GENIUS法施行中 |
🧭 欧州中央銀行、デジタルユーロ導入を2029年に前倒しへの要点まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な決定機関 | 欧州理事会・欧州中央銀行(ECB) |
| 総裁発言 | 「デジタルユーロは信頼の象徴、最終段階へ」 |
| スケジュール | 2026年法整備 → 2027年パイロット → 2029年正式展開 |
| 技術構成 | DLTを用いない中央集権型デジタル通貨 |
| 投資規模 | 約15億ドル(開発費)+ 年間3.7億ドル(運用費) |
| 国際文脈 | 米国はステーブルコイン支持、EUはCBDC推進へ対抗姿勢 |
💬 総括:EUの「通貨主権」再構築への一歩
欧州連合は、「ユーロのデジタル化=欧州の結束象徴」としてプロジェクトを位置づけ、
ドル主導のステーブルコイン経済圏に対抗する戦略的布石を打ちました。
この動きは、
- 金融主権の確立(“Digital Sovereignty”)
- 国際送金効率化
- 金融データの欧州内保持
を目指す長期戦略の一環であり、2029年は欧州マネーの転換点となる可能性があります。






