
まとめ:米連邦準備制度理事会(FRB)、新たな「決済専用口座」創設に向け意見募集
米国のfederal Reserve(FRB)は、中央銀行の決済インフラへのアクセス手段を拡張する可能性として、新たに「Payment Accounts(決済口座)」と呼ばれる限定的な口座制度の導入を検討し、パブリックコメントの募集を開始した。意見募集期間は45日間となっている。
■ マスター口座を簡素化した新ルート
従来、FRBのマスター口座は、中央銀行の決済システムに直接接続できる重要なインフラだが、取得要件が非常に厳しく、フィンテック企業や暗号資産関連企業にとっては大きな参入障壁となっていた。
今回検討されている「決済口座」は、
- 利息は付与されない
- FRBからの信用供与は受けられない
- 保有残高に上限が設けられる
といった制限を設けることで、システムの安全性を維持しつつ、より多くの事業者に決済レールへのアクセスを開放することを目的としている。
■ FRBの狙い:イノベーションと安定性の両立
FRB理事のChristopher Wallerは、この取り組みについて「金融システムの安全性を損なうことなく、決済分野のイノベーションを促進するための第一歩」と説明している。
現在、FRBのマスター口座を保有しているのは約5,000機関に限られているが、決済口座が実現すれば、数百規模のフィンテック企業や暗号資産取引所が新たに直接アクセスできる可能性がある。
■ リアルタイム決済(RTP)への影響
FRBは、この新口座がリアルタイム決済(RTP)の普及を後押しする可能性にも注目している。RTPネットワークは2025年初頭に累計10億件の取引を突破しており、中央銀行レールへの直接接続が拡大すれば、
- 取引コストの低下
- 流動性管理の改善
- 即時決済の普及加速
といった効果が期待されている。
■ 懸念点:マネロン・テロ資金対策
一方で慎重論もある。FRB元規制担当責任者の**Michael Barr**は、十分な監督体制がなければ、マネーロンダリングやテロ資金供与に悪用されるリスクがあると指摘している。
そのため、最終的な制度設計では、規制・コンプライアンス面の強化が不可欠になる見通しだ。
■ ひとことで言うと
FRBは「中央銀行決済への入口を広げる」一方で、「銀行並みの特権は与えない」中間的な口座制度を模索している。
これは、フィンテック・暗号資産・リアルタイム決済時代における、米国の金融インフラ再設計の始まりと言える。






