
ステーブルコインはCBDCの偽装版か? ― 筆者の結論は「No」
1. 背景
- 一部では「ステーブルコインは実質的にCBDCではないか」という懸念が拡大。
- トランプ前政権や米議会がステーブルコインに前向きな姿勢を示す中、この議論が加速。
- 筆者は「両者は似ている部分もあるが、性質は明確に異なる」と主張。
2. 定義の違い
- ステーブルコイン
- 民間発行の暗号資産で、法定通貨やコモディティなどに価値をペッグ。
- 発行企業は準備金の運用益で収益化。
- 米国で法的枠組みが整備され、金融機関参入も期待。
- CBDC
- 中央銀行が直接発行・管理するデジタル通貨。
- 政府が金融活動をデフォルトで把握・統制可能。
- 世界139以上の国・地域が開発を進め、中国やナイジェリアなどは既に導入。
3. プライバシー面での違い
- ステーブルコインやデビットカードは、政府が情報を得るには発行者や銀行を通す必要がある(間接的)。
- CBDCは政府が直接ユーザーの身元と全取引履歴を保有。
- 公共ブロックチェーン上のステーブルコインは取引履歴が公開されるが、KYC情報はブロックチェーン上に直接記録されない。
- CBDCの場合、本人情報と取引が完全に紐づく。
4. 監視・統制リスク
- CBDCのリスク
- 政府が即時に口座凍結・監視可能(例:カナダ2022年のデモ資金凍結)。
- すべての取引が政府データベースに自動的に蓄積される。
- ステーブルコインのリスク
- 公開台帳で第三者も取引を追跡可能なため、理論的には監視対象が拡大。
- ただし、自己管理ウォレットやゼロ知識証明など、プライバシー強化技術の発展余地あり。
5. 例外:政府発行の「ステーブルコイン」
- 政府が発行・管理する場合は事実上CBDC。
- 例:パラオがRippleと行った米ドル裏付けの試験発行。
- 米ワイオミング州も「ステーブルコイン」と称する州発行案を検討中。
6. 結論
- 本質的な違い:CBDCだけが「政府がデフォルトで直接アクセス・統制できる通貨」。
- ステーブルコインは民間発行であり、監視には仲介を経る必要がある点が重要。
- 米国はCBDC阻止だけでなく、過去の金融監視強化策(例:銀行秘密法)を見直し、国民の金融プライバシーを回復すべき。