
記事まとめ:RBI副総裁「CBDCはプログラムにリスクはあるがステーブルコインよりは遥かに安全」
発言者と背景
- 発言者:T. Rabi Sankar
- 所属:Reserve Bank of India(RBI)副総裁
- 場所:Mint Annual BFSI Conclave 2025
- 日付:2025年12月12日
1. RBIの基本姿勢:
「ステーブルコインは不要、CBDCの方が圧倒的に安全」
Sankar副総裁は、ステーブルコインについて次のように断言しました。
- ステーブルコインは現代貨幣の要件を満たしていない
- 主張される利点(送金の速さ・金融包摂)は、
👉 既存の法定通貨や決済インフラでより安全に実現可能 - インド国内にはすでに
- UPI
- RTGS
- NEFT
という「高速・低コスト・堅牢」なデジタル決済基盤が存在
→ 民間発行デジタル通貨を導入する合理性はほぼない
2. ステーブルコインの本質的リスク
RBIが特に問題視している点:
- 実際の利用用途は
👉 日常決済ではなく、暗号資産市場での投機・レバレッジ用途 - 広範に普及した場合のリスク:
- 通貨代替(通貨主権の侵食)
- 金融政策の伝達力低下
- 銀行の中抜き(ディスインターミディエーション)
- 資本規制の困難化
- システミックリスク増大
- シニョレッジ(通貨発行益)が民間・海外事業者に流出
→ 国家財政に長期的な悪影響
3. CBDC(デジタル・ルピー)の優位性
Sankar副総裁は、CBDCを次のように評価しています。
CBDCの特徴
- 法定通貨による裏付け(ソブリンマネー)
- トークン型デジタルマネー
- プログラマビリティ(条件付き支払い)
- アトミック決済
- クロスボーダー摩擦の低減
- 「信頼・単一性・主権」を維持
👉 ステーブルコインの利点をすべて包含しつつ、リスクを排除
4. CBDC普及の最大課題:「プライバシー」
🔑 最大の論点:現金並みの匿名性
- 国内普及には
👉 「小額取引における段階的匿名性(Tiered Anonymity)」が不可欠 - しかし問題点:
- デジタル取引は必ず「痕跡」を残す
- 技術的匿名化は可能でも
👉 法的裏付けがなければ実装不可
- 米国などでも同様の懸念が存在
「匿名性は不可避だが、制度設計と法整備が不可欠」
5. プログラマブルCBDCへの慎重姿勢
- 補助金・給付金用途など
**条件付き支払い(用途制限・期限付き)**は効率的 - しかし:
- 監視社会化の懸念
- 個人の自由侵害リスク
→ プライバシー設計が不可欠
6. 国際決済:ステーブルコイン不要論
- RBIの立場:
- CBDC同士の国際接続(CBDCコリドー)で十分
- UPIの国際接続拡大と同じ思想
- 銀行間・卸売CBDCは:
- 決済リスク削減
- 必要資本の大幅削減
- クロスボーダー送金に極めて有効
7. 総括(RBIのメッセージ)
| 観点 | RBIの結論 |
|---|---|
| ステーブルコイン | 不安定・投機的・主権侵害 |
| CBDC | 安全・公的・主権維持 |
| 普及条件 | 現金並み匿名性+法整備 |
| 国際送金 | CBDC連携で十分 |
一言で言うと:
「ステーブルコインは“必要悪”ですらない。CBDCこそが国家にとって唯一の持続可能なデジタルマネー」






