
「南アフリカ、リテールCBDCに差し迫った必要性なしと結論」
発表主体
- South African Reserve Bank(SARB)
- 公表日:2025年12月16日
- 内容:リテール型CBDC(デジタル・ランド)に関する公式ポジションペーパー
1. 結論:
南アフリカは当面、リテールCBDCを導入しない
SARBは、長年にわたる
- 調査
- 実証実験
- ステークホルダー協議
を踏まえ、次の結論を示しました。
👉 「現時点で、リテールCBDCを導入する強い・差し迫った必要性はない」
- 技術的には導入可能
- しかし、既存のデジタル決済施策の方が有効と判断
2. 背景:デジタル決済がすでに十分発達
SARBが重視しているのが、既存インフラの成熟度。
主な取り組み
- Payment Ecosystem Modernisation Programme
- 決済基盤の刷新
- より安全・高速・包括的な決済環境を構築
SARBの見解:
- 金融包摂の拡大は
👉 CBDCではなく、既存デジタル決済の強化で達成可能
3. それでも「将来の可能性」は否定せず
SARBは完全否定ではなく、慎重姿勢。
- 今後も:
- 国際動向を継続監視
- 必要が生じれば即応可能な準備は維持
- 将来的検討テーマ:
- 中央銀行マネーへのアクセス確保
- 既存決済手段との補完関係
👉 「今はいらないが、永久に否定するわけではない」
4. ケニアと共通する立場
南アフリカの判断は、Kenyaと酷似。
- ケニア中央銀行:
- 「短中期的に優先課題ではない」
- 背景:
- 金融包摂率 約85%
- M-Pesaを中心としたモバイル決済がほぼ全国普及
👉 既存民間決済が強い国ほど、リテールCBDC不要論が強い
5. アフリカでは「少数派」
南アフリカとケニアは、アフリカ全体では例外的存在。
| 国 | 状況 |
|---|---|
| Ghana | eCediを2025年ローンチ予定 |
| Nigeria | eNairaを約4年前に導入 |
| Uganda | デジタル・シリングを試験中 |
6. 戦略転換:リテール → ホールセールCBDCへ
SARBは重点をホールセールCBDCに移行。
目的
- 金融市場のイノベーション
- クロスボーダー決済の効率化
- システミックリスク耐性の向上
背景
- DLT(分散型台帳)研究の蓄積
- プログラマビリティ
- 相互運用性
- 決済効率
👉 「個人向けより、銀行間・国際向け」
7. ステーブルコイン・暗号資産にも否定的
SARBの立場は明確。
- デジタル資産・ステーブルコイン:
- 決済手段ではなく投資対象
- 民間事業者(例:Centbee)が普及を進めても、
👉 国民認識は「投資」が中心
8. 補足:CIPS参加が招いた波紋
CBDCとは別軸で注目された動き。
- 南ア最大手銀行:Standard Bank
- 中国のCross-Border Interbank Payment System(CIPS)に接続
- 人民元での対中直接決済が可能に
- 懸念:
- 地政学リスク
- 脱ドル化疑念
同行CFOの見解:
「地政学ではなく、顧客ニーズ(速く安い送金)が理由」






