
UAEと中国、初のCBDCクロスボーダー決済を実現──新プラットフォーム「Jisr」で金融連携を加速
アラブ首長国連邦(UAE)と中国が、中央銀行デジタル通貨(CBDC)を活用した初のクロスボーダー決済を実施し、両国の金融協力が新たな段階へと進んだ。
今回の決済は、アブダビでの会合にて正式に行われ、新たに開発されたデジタル決済基盤「Jisr(ジスル)」 を通じて実現したものだ。
この取り組みは、UAEと中国による経済・金融連携の強化だけでなく、
国際貿易・国境決済インフラの次世代モデルとして世界的に注目される動き となっている。
1. 新プラットフォーム「Jisr」とは──中東・アジアをつなぐ新たなCBDC決済ハブ
「Jisr」は、UAEと中国の複数銀行が参加して立ち上げたCBDC対応クロスボーダー決済プラットフォーム。
特徴:
- 即時決済(リアルタイム)
- 大幅な手数料削減
- 銀行間の中継を減らす直接接続型モデル
- 国際商取引・個人送金の両方を対象
2026年には、他の中央銀行も参加予定で、
アジア〜中東のCBDC貿易ルート(デジタルトレード回廊)形成が加速するとみられる。
2. 両国の国内決済システムを接続──24時間 途切れない相互送金へ
UAEのInstant Payment System(IPS) と
中国のInternet Banking Payment System(IBPS) が相互連携したことで、
両国のユーザーはいつでも安全にリアルタイム送金が可能になった。
代表的なユースケース:
- UAEから中国へ留学する学生への奨学金送金
- UAE在住の中国人による母国への送金(レミッタンス)
- UAE企業と中国企業間の商取引の支払い
この連結は、
国際決済の“SWIFT依存からの脱却”を進める実例 としても注目される。
3. 新プリペイドカード「Jaywan–UnionPay」で金融連携がさらに拡大
UAE国内カードスキーム Jaywan と、中国の巨大決済ネットワーク UnionPay が統合された
初のマルチスキーム・プリペイドカード「Jaywan–UnionPay」 が正式に発行された。
ポイント:
- UAE国内ではJaywanとしてローカル処理 → 手数料抑制
- 国外ではUnionPayの180カ国以上のグローバルネットワークを利用
- 交換所Lari Exchangeとの協業で発行開始
これにより、
UAEの決済インフラが国際互換性とローカル最適化の両立を実現。
4. UAE×中国、金融協力は“戦略的パートナーシップ”へ深化
UAE中央銀行総裁 Sheikh Mansour bin Zayed は、今回の一連の発表を次のように評価した:
「これらの先進的な取り組みは、UAEと中国の戦略的パートナーシップの深さを示し、
経済・金融・技術協力の新たな地平を開くものである。」
特に彼が強調した点:
- Jisrプラットフォームの立ち上げ
- 即時決済システムの連携
- Jaywan–UnionPayカードのローンチ
いずれも “安全で現代的な金融インフラを構築するための大きな前進” と位置づけられており、
UAEの金融イノベーション国家としての地位を強化する結果につながる。
5. 地政学的意味──中東と中国が描く“ドル外決済ルート”の布石
今回のCBDC初決済は単なる技術実験ではなく、
国際決済の地政学における重要シグナル とも言える。
見えてくる構造:
- UAE=中東のデジタル金融ハブへ
- 中国=人民元の国際化をデジタル領域で加速
- 両国の連携=ドル依存を減らす新たな決済ネットワークの構築
これは、mBridgeやBRICSの動きとも連動し、
国際貿易における決済多極化が加速することを意味する。
結論:UAEと中国のCBDC決済は“次世代国際決済インフラ”の実装フェーズへ
今回の発表は、次の3点で画期的だ:
- 初のCBDCクロスボーダー決済を商用レベルで実行
- 両国の即時決済インフラの連結により24/7国際送金が可能に
- Jaywan–UnionPayカードで決済ネットワークが多国間へ拡大
これらはすべて、
UAEと中国が国際金融の新しい“デジタル回廊”を構築しつつある証拠 である。
今後、他国の中央銀行や企業が参加することで、
このCBDCネットワークはさらに拡大し、
国際貿易・送金・金融インフラの新基準 となる可能性が高い。





