世界中の中央銀行がデジタル通貨(CBDC)の導入を検討する中、アメリカではCBDC発行を制限する法案が下院を通過し、大きな注目を集めています。この動きは、ただの金融政策の転換ではなく、仮想通貨・ステーブルコイン・決済インフラ全体に影響を及ぼす可能性があります。
本記事では、アメリカをはじめとする各国のCBDC政策の現状と、その背後にある懸念、そして台頭するステーブルコインとの関係について詳しく解説します。CBDCは本当に終わったのか、それとも一時的な停滞なのか──その答えを探っていきましょう。
以下は、記事「What a CBDC Ban Means for the Digital Assets Industry」のまとめ記事です。
CBDC禁止の波紋:デジタル資産業界に与える影響とは?
世界中の政府が中央銀行デジタル通貨(CBDC)導入を検討する中、アメリカではCBDCの発行を事実上禁止する法案が下院を通過しました。この動きは、単なる金融政策の変更にとどまらず、デジタル資産業界全体の将来を左右する可能性があります。
CBDCの失速:なぜ多くの国が後退したのか
かつてはG20諸国を含む130以上の国がCBDCを検討していましたが、2025年現在、実際に導入したのはナイジェリア、ジャマイカ、バハマの3カ国のみ。多くの国で計画が頓挫している背景には以下のような要因があります。
- パンデミックによるキャッシュレス化の加速
- 地政学的不安(例:ウクライナ侵攻)
- プライバシー懸念
- コストと導入効果のバランス
- 監視社会化への懸念
イギリスや韓国なども、コスト対効果や公共の反発を理由にCBDC導入を見送っています。
アメリカの「CBDC禁止法案」が意味すること
バイデン政権時代にはCBDCの可能性が検討されましたが、トランプ政権の下で政策は転換。議会の承認なしにFRBがCBDCを発行できないとする法案が下院を通過しました。
仮想通貨アナリストのJoel Hugentobler氏は、**「この流れは予想されていたこと。民間のイノベーションを重視する方向性が明確に表れている」**と述べています。
ステーブルコインが代替の主役に?
CBDCに代わって脚光を浴びているのが、TetherやCircleなどの民間が発行するステーブルコインです。既に世界市場では約2720億ドル規模に達しており、透明性の高い準備金報告や新たな規制(GENIUS法)の整備により、政府・業界・ユーザーからの支持を集めています。
ただし、ステーブルコインにもプライバシーの問題があります。Tetherは不正送金対策として25億ドル以上を凍結したと報告していますが、これが監視能力の高さを示す一方で、取引の自由やプライバシーへの不安も呼び起こしています。
CBDCは完全に終わったのか?
現在は失速しているように見えるCBDCですが、Hugentobler氏は**「完全に可能性が消えたわけではない」**と述べています。政権の交代や、パンデミック級の流動性ショックが起これば、再び注目される可能性もあります。
今後の展望:共存の時代へ
ステーブルコイン、カード決済、リアルタイム決済、現金など、単一の決済手段に集約されることはなく、用途に応じて使い分ける「共存の時代」が訪れると考えられています。
まとめ:CBDC禁止は一時的な潮流か、それとも新しい時代の幕開けか?
CBDCの行方は今後の政権動向や社会的ニーズによって再び変わる可能性があります。民間主導のステーブルコインが市場をリードする一方で、CBDCの再浮上に備えておくことも、デジタル資産業界にとっては重要な視点となるでしょう。